STORY
まえがき
物心ついた頃からずっと、ただ創作が楽しくて仕方がないのだ。
お気に入りが出来上がっては、それを側に置いて愛でている。
来る冬のためにウールを編み、春を待ち遠しくコットンを編み、紙を編み、言葉をつらつら編み続ける、
編み物プロジェクト。
マエル・モードのクローゼットへようこそ。
Cycle
物はどこから来て、どこへ還るのか。
作るひと
時代は進み、発展し、もっと安く、もっと早く、ものづくりはできるようになった。
便利になっていく一方で、失われた技術や文化も世界に溢れている。
何年後かに私の仕事も無くなっているかもしれない。
それでも変わらずにずっと、ものづくりを続けている人がいる。
彼らに尊敬と憧れを抱いて、私もずっと作り続けている。
安く手に入るものだけじゃなくて、みんなが持っているものだけじゃなくて、作った人のことを思い浮かべられるものを長く使っていきたい。
あるいは、ここではお得に買うことができる、遠い国の誰かが作ったもの。
彼らの技術や込められた心に、思いを馳せていたい。
作り手である私の先にも、道具や材料を作る人がいて、そうやってたくさんの人を周って出来上がる。
手をかけて作られたものには、作った人たちの人柄が美しく光っているようだ。その人たちの想いを受け継いで、私も大切に使っていきたい。
キラキラしたものづくりを目指して、そういう手仕事を愛して、この先もずっと守っていきたい。
物のゆくえ
日々使っている道具や衣類、身の回りの物の原料をどれだけ知っているだろうか。
世界で使われている材料のうち、リサイクルできる素材や条件は限られている。ほんの一部なのにも関わらず、リサイクル可能なものが全て活用されているとは現状言い難い。
生活の過程で出るごみの他に、飽きたから、壊れたから、といった理由でも世界にごみは増えていくけれど、それらは自分の住む町を出た後どうなるのか。
埋立地は有限である。では実際あと何年分残っているだろうか。
時々でいいから、想像してみたい。
地球で生きている私たちの生活について、自分の周りのその先で起こっていることについて、
時々考えて調べてみたい。
どうやって捨てるかを考え出すと、結局のところどうやって作ったのか、に行き着く。
私の作品をできれば捨てずに長く使い続けて欲しいけれど、でももし手放したくなったらとっても簡単。
だってあなたは、私がこれを何から作ったのか知っているから。
物のゆくえは持ち主が自分で決められるのだ。
使いつづける
いっそ捨てないという選択肢も持っていたい。売るも良し、直すも良し、譲るも良し、メンテナンスをすると蘇るものはたくさんある。
別の物に変換することができるなら、新しいものが手に入る上に、思い出まで更新できちゃう。
捨てずにいてくれたら、何度でも修理すればまた生まれ変わる。
穴が開いても、取っ手が外れても直すよ。
私がそれを見たらすごくすごく嬉しいから。
そんな風になるまで、一緒に過ごした時間を想像してみるから。
その時には私の技術も工夫ももっと向上して、もう壊れないものにできるかも。
自分で直すのも良い。
今の気分に合わせてリメイクするのも良い。
私の手元を離れた瞬間から、持ち主色に染まっていくのが嬉しい。
どんどん馴染んで、あなたのものになった後、また見せに来て欲しい。
あとがき
使う人が、どこで作られたものなんだろう?どうやって作ったんだろう?作った人はどんな人な
んだろう?と、考えて、想像して、知ることで、持ち主がその価値をしっかり認めてくれること。
そうすることで、消費者と物と制作者の、愛とリスペクトのサイクルは生まれます。
きっと何倍も愛着が湧くはず。
何年も大事に使い続けたいと思ってもらえるように、私もたくさん手を動かしたいと思います。
手放す時にはぜひ、その後どうなるのか想像してみてください。
それが処分された後、また私の手元に材料となって循環されるかもしれません。
そしてまた新しいものを編んで、誰かの元に、もしかしたらまたあなたの元に、届くことを願って
います。